2020.08.21

デザイン

働き方

新人デザイナーとの関わりで意識しているポイント

新人デザイナーがチームに加わった時に、フォローや指導の面で意識しているポイントを自分の考えとWeb上や書籍で発信されている先輩方の意見を元にまとめてみました。

私自身はWebデザイナー歴7年、育成に関わった人数は10人いくかいかないかぐらいです。

個人的に意識しているポイントと、会社として組織的に進めている部分の2軸からご紹介します。

この記事は下記のような方向けに書いています。

  • 新人デザイナーの育成やフォローに関わる方
  • 新人デザイナーの方
  • デザイナーに限らず社内で新人の育成やフォローに関わる方

入社して最初の数ヶ月が肝心!

「こうやって仕事をしていくんだ」という姿勢が身につくのがこの時期です。どういう心構えや意識の持ち方・考え方で仕事に臨めばいいのかを小手先のテクニックより優先して伝える必要があります。クオリティ・期限・プロのデザイナーとしての対応など、最初の取り組み角度=今後の成長スピードに影響するのでともかくここがキモです。

ものごとの最初に満足感や安心感、納得感が得られると、その後までずっとその心持ちが持続するのが「初頭効果」です。指導側が最初に何を言うか。ここでしっかり伝えられれば、新人だけでなく、関わる人すべてがその恩恵を受けられるでしょう。

新人デザイナーを成長に導く23のヒント

「管理者」「指導者」ではなく「デザイナー」で

「デザイナー」は「デザイナー」に従う
実際にデザイナーをマネジメントするためには、

「プレーヤーとしての自信と覚悟」がとにかく重要であり、
「デザイナーである自覚」をマネージャー自身がしっかりと持てるかどうかにあると思います。

一番やってはいけないことは、
これまで培ってきた経験値を盾に、
自分が出来る範囲のマネジメントで立ち止まってしまう事。

デザイナーをやる気にさせる10のこと

新人育成に関わらず、指導する立場だからと言って自分の背中を見せるのを忘れてはいけません。日頃、管理や雑務のウェイトも高いですが「管理やバックオフィス系の業務があるから」を盾に制作案件をやらない、といったスタンスはとらないようにしています。最新の技術やトレンドなど移り変わりが激しい業界でもあるので、常に自分が新しものを取り入れようとアンテナを張るのも怠れません。

若干、話が逸れますが、日本のキャリアアップでは、プレイヤー(制作)→昇進→マネージャー(管理)へのシフト=キャリアアップという捉え方が本筋のようになっています。海外では逆で、職種にあわせて特性が異なります。

デザイナーは本来ものつくりが好きなのに、日本ではデザイナーのキャリアパスがマネージャーになっていき、プレイヤーではなくなるという問題がある

海外ではそうではなく、マネジャーにならなくても、クリエティブディレクター役職になって、現場と近い距離ところにいられる

デザインの叡智がここに集結する「Designship 2018」振り返りレポート

当社でもマネージャーへのキャリアパスが一般化、浸透していますが、これから変えていこうと人事制度のブラッシュアップが始まっている段階です。個人的には、制作に普段関わらない人から色々言われるのは嫌なので、自分が作っている姿を見せるのはもちろん、デザイナーとして活躍したいという意味で抗っています笑(残業時間は増えちゃってます)

すこし乱暴かもしれませんが、デザイナーたるもの、新人を前にするのであれば基本は現場で一緒に手を動かすべきと考えています。

確認の際は意図をヒアリングする

よく話題に上がりますが、
「デザインは理由が説明できないとダメ」
「デザインに理由なんかいらない」
と真逆の意見があります(よく聞くのは1個目のほうですかね)。

どういう文脈に置かれるかで良し悪しが変わってくるものではありますが、基本的には前者、語れないよりも語れた方が良いと考えています。無いよりあったほうがいいというのはちょっと日本人ぽい考え方ですかね笑

新人にフィードバックする際にも、制作理由をヒアリングした方が効果的です。

なにをしたくてこの形や色使い、言葉を選んだかを理解した上で、「だったらこうした方が良いかも」等の先の議論に進んだ方が、「ここに至るまでどう考えたか」の延長線として話ができるので寄り添った指摘ができます。

その場で覚えてもらう

手順を正確かつ丁寧に教えると同時に、キーボードショートカットもセットで教えるようにします。すぐに覚えれば、反復しているうちに身体が勝手に反応するようになり、後々の効率にかなり影響してくるはずです。丁寧さとスピードを同時に身につけてもらいましょう。

新人デザイナーを成長に導く23のヒント

非常に共感するご意見でした。特にキーボードのショートカット等はその場で覚えた方がいいというか覚えない理由がないです。

これに対して「私はこのやり方で慣れているので口出ししないでください」という反論が実際ありました。

気持ちはわかりますし、一定のクオリティやスピードを担保できるのであればよいですが、経験則ではまず無理なのですぐ覚えるように伝えています。なによりツールボックスからマウスでポチポチ切り替えをしてると細かいアイコンを探す作業で目や心が無駄に疲れてしまいますし、反復する動作であれば向上する意味で素早く扱えるにこしたことはないわけです。

自分の作業を見せる

制作スピードなど、プロとして目指すべきレベルを把握してもらいます。すぐにできなくても、目標にするには一番効果的。目の前で実践することはもちろん、リモートで画面共有しながら作業の様子を見せたり、ラフ描きの清書を描く様子を動画に撮って送るといったことを実践しています。

新人デザイナーを成長に導く23のヒント

こちらも共感するご意見で、目の前で作業するのはもちろん、期日が迫ってきているときはその場で巻き取ってしまうこともあります。傷ついてしまう方もいますが、クリエイターへの苦情にならない形で、悔しい想いや挫折・失敗を経験してもらうことも考えて時には必要な処置と思います(もちろん次はこうしてみようというケアも含め)。

また、先輩の仕事をみないと「今の自分の制作スピードやクオリティ」を基準に置いてしまうため、求めているところはもっと上であり、それがまず当たり前と理解していただくことがスタートラインではないでしょうか。

今5時間かかってることは、実は30分程度でもっとクオリティ高く終わる人もいるんだよ、と前提の部分を構築し、もっと腕を高める方向に目線を上げてもらいます。

確認する基準を持つ

私の場合はですが、複数のデザイナーの制作物を一日に何度も確認する時もあります。
0~100まで指摘することもできるのですが、終わらなくなってしまったり、案件進行に影響がでてしまうことも考慮して、以下2点を最低限レベルとし、優先的に確認しています。

  • 内容や訴求がしっかり伝わること
  • 不自然さや違和感がないこと

それぞれについて紹介させていただきます。

内容や訴求がしっかり伝わること

「そんなの当たり前じゃん!」というツッコミが飛んできそうですが、チラシ等のグラフィックデザインや、Webサイトも最低限のレベルではまずは「受け手に情報が伝わること(その後申し込み等のアクションを起こしてもらうことも含め)」が目的であり役割です。

ちゃんと内容が伝わるかどうか振り返りの視点をもつことは、デザインに限らずこのブログのような文章を作る際も、またはなにかをプレゼンテーションする際も基本であり重要な視点です。

なんとなくのオーラで良い感じに出来上がってるようでも、よくよく見ると間違って伝わりそうだったり、趣旨と違う部分が推されていたりすることは普通にあることなのです。※特に期限間際で焦って確認にあがってくるもの程、慎重かつ丁寧にチェックに臨みます。

不自然さや違和感がないこと

こちらもあたり前のことですが、伝わる伝わらないの話とも繋がる部分で、
レイアウトや配色、サイズ感など基本的な部分に違和感があると、伝わるとか伝わらないとかの土俵にもあがれなくなってしまうことがあります。

ボタンなどUIのサイズ感や配置から先の挙動がイメージできなかったり、見た目に違和感がありそもそもそれがボタンであることに気づけなかったり・・

佐藤卓さんの著書「塑する思考(新潮社)」の「中央と際」の話で触れられていましたが、中央寄りのふつうに良いものを作るのは(時代的には「際」立ったデザインが脚光や注目を浴びる傾向にありますが)大事なことなのです。
(書籍の中で触れられているのは日本のデザイン全体に対しての話なので、新人指導とは別なのですが、中央を大事にするという視点では、もっと面白いもの作ろうよ!よりも、まずはしっかり伝わるものを作ろう!をデザインの確認で重要視するのは、親しいものと捉えられないこともないかと・・)

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ゴムのように外部から力が加わっても、その力がなくなれば元に戻る性質を「弾性」といいます。対して外部からの力が加わって凹み、そのままの形を保つ性質を「塑性」といいます。塑性は加わった力次第でそのつど形を変化させます。 置かれて状況を受け止め、適切に対応できるようにしておくこと。固定されたスタイルを持たずに、やれることの可能性を開いておくこと。そうした「塑する思考」は実はデザイナーにとって必要ではないかと述べています。おそらく、これは一般的なデザイナーのイメージとは大きく異なっていると思います。 「塑する思考」を中心に、一般的に誤解されがちなデザインやデザイナーの意味が理解しやすく書かれている本です。 * ◾︎タイトル : 塑する思考 ◾︎著者 : 佐藤卓 ◾︎出版社 : 新潮社 * #塑する思考 #佐藤卓 #新潮社

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また、制作物にたいしてアイデアを伝えたり、指摘する部分に関しては、概ね下記のご意見と同じようなスタンスでいます。

僕はフィードバックの際に、
「こうしたら?」ではなく、「例えばこうしたら?」のように、
「例えば」というワードをよく用います。

そのデザインに行き着いたからには、
デザイナー本人が誰よりも真剣に考えた結果であることは必然です。

そのため、「こうしたら?」と上から落とすのではなく、
最終ジャッジを本人が考えられるように、
「例えば」で判断に余白を持たせるということも、
本人の納得感を得るためには非常に重要です。

デザイナーをやる気にさせる10のこと

「例えば・・・」もそうですが、「こうするとよい”かも”ね」という選択肢をいくつか提示して
あくまで本人に試行錯誤してもらうような伝え方を意識しています。

何より、他の人からの「ああした方が良い」「こうした方が良い」でロボットみたいにデザインやっても楽しめないですからね。

[取り組み編]デザイン確認フロー

ここからは、会社として組織的に取り組んでいるフォローやスキルアップの取り組みについて紹介させていただきます。

GMOインターネットのクリエイティブチームでは、相互に制作物を確認する仕組みを取り入れています。

社内のスキル評価とあわせて、自分より上位のスキル評価を受けている方にデザインの相談や確認をおねがいできる仕組みです。
新人も含め、社歴や年齢に関わらず実力や実績、取り組み姿勢に基づいた評価で区分けされています。

チーム全員に見える場所でフィードバックをするので、

  • 誰がどういう案件に取り組んでどんなものを作っているのか
  • 制作物に対してどのようなフィードバックをしているか

が可視化され、1対1の側面もありますが、制作/指導の両面でチーム全体に対しての学びの機会にもなり、加えて評価の際の参考にもなります。

また、デザイン確認フロー導入以前は個のクリエイターとして制作案件に立ち向かう風土が強かったのですが、導入後は、個の側面は残しつつも、チーム間での相談や議論ができるような体制で案件に臨めるようになりました。これは東京、宮崎の2拠点含めた全クリエイティブチームで運用しています。

[取り組み編]チーム勉強会

宮崎クリエイティブチーム独自の取り組みとしては、月1でチーム勉強会を実施しています。お題は自由で持ち回り制、2人〜3人がペアまたはトリオとなり同じテーマで話すこともあれば、それぞれが別個で話すこともあります。

実際にあった例としては・・

  • 好きなスマホゲームのUI研究
  • プライベートで作ったモノの紹介
  • 最近はまっているフォント研究
  • 直近の制作事例共有

インハウスクリエイターなので縦軸では事業担当者とのやりとりがメインとなります。それとは別に、横軸でのクリエイター間の共有や交流もあるため、何かしらクリエイター同士で刺激し合う機会を作ることを考えています。また、制作会社と違いディレクターに同行してお客様にプレゼンテーションしたり他社とコンペする機会もないため、最低限自分の作ったものに関しては語ることが上手くなってほしいという想いがあります。

以前、プレゼンテーションに関する記事でも触れましたが上達において最も大切なのは「本番を想定した練習」を繰り返すことです。

プレゼンテーションを良くする3つの心構え

卒業式の贈る言葉から結婚式の友人スピーチまで、人生には何かと人前で話さなきゃいけない場面があります。僕は元々人前で話すのはそんなに好きで...

もちろん新人クリエイターにも発表していただくようにしています。一発目はハードルが高く感じてしまう人が多いですが、一度出来てしまえば後は慣れやブラッシュアップの領域になります。先輩たちの前で話すというのは、自信を形成していく意味でも一定の緊張感と乗り越えた時の達成感があり、日頃の取り組みや姿勢に良い影響があると考えています。

大事なのは指導やフォローをする側の姿勢

同期や後輩たちからも新人のフォローや指導に関する相談をいただくことがあります。

私自身、そんなに自信があるわけではなくその都度迷ったり悩んだりしながらやっています。これまで数名の新人や、新人のフォローをする方々と関わらせていただいて感じるのは、結局、重要なのは指導やフォローを担当されている方々がその大切さを自覚できているかどうかではないかと思います。

この人は出来ないし向いてないからダメという結論を様々なトライをせずだしてしまったりすると、せっかく同じ環境で縁した仲間なのに少しさみしいです。
(もちろん、たくさん足掻いて、結果的にやっぱり厳しいということはあります)
その人が1人で歩けるようになるまで、手を変え品を変え諦めず粘り強く二人三脚で立ち向かっていく姿勢が肝要です。

唯一できることは育つきっかけを創ることで、メンバーがきっかけを掴むために、掴みやすいボールを粘り強く投げ続けられること

部下育成の失敗談から学ぶ。メンバーの成長を促す3つのこと。

自分がガンガン活躍するクリエイターになり、「この人みたいになりたい」あるいは「この人のように作れるようになりたい」という憧れの対象になるのはまず前提として大事だと思います。加えて、その延長線で自分と同じかその半分でも作れる人になるお手伝いができればそちらの方が新人さんのクリエイター人生やその人がまた育てるかもしれない誰かのために、社会全体にとって価値あることです。

なにより宮崎オフィスは未経験スタートのメンバーが多いので、主体的に成長していける環境作りや、新人育成に重きを置く価値観の浸透を優先して考えています。

まだまだ勉強中の立場で偉そうに色々と述べさせていただきましたが、特に新人時代から周りの方々にフォローしてもらって今現在まで這い上がってきたような人には、これまで力添えしていただいた恩を返す意味でも一緒に頑張っていけたらなと思います!

この記事を書いた人

ブーノ

デザイナー

長野18年→横浜6年→東京3年→宮崎3年。アニメとゲームとスマート家電が趣味です。日本に名前を残す最高のクリエイターを目指しています。