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ポートフォリオ講座
前回の記事の続編シリーズになります。
職業訓練校の生徒さんに向けにて「ポートフォリオ講座」を実施しています。前回の実施でついに計6回を迎えました。
私は4回目まで担当していましたが、宮崎を離れる際にふじもんさんを中心にみんなに運営を託しました(とはいえ月イチくらいで宮崎に行かせて頂いてます)。先日同行させてもらった時は、立派に講座を運営しているみんなの姿に涙が出ました。
さておき、複数回に渡る講座の実施によって、ポートフォリオを研究・調査し知見も溜まってきたのでこの場をお借りして整理していきたいと思います。
ポートフォリオを分析してみる
「ポートフォリオ」と言っても色々ありますよね。
「井の中の蛙大海を知らず」という言葉がありますが、周囲を知らないと、自分の立ち位置もわからないよね、っていう感じで、今回はWeb上で閲覧可能なポートフォリオを分析していきたいと思います。
ポートフォリオ講座冒頭でも似たような分析を紹介していました。ポートフォリオ=作品を綺麗に並べていくイメージが強いですが、色々な伝え方・見せ方があるよというのを知って活かして頂けたらという想いでした。
ポートフォリオ百科
今回はこちらのサイトに掲載されているポートフォリオを中心にご紹介します。私が就職活動していた10年前は他人のポートフォリオを見せてもらえる機会は無かったです。今はこれだけ丁寧にまとまって解説もしてくれているので勉強になりますね。
「技術力を紙とWebを駆使して伝える」ポートフォリオ
私の作品はWebやCGなどの動きのあるものが大半のため、Webポートフォリオはそういった動きのある作品の本体を見てもらうためや、さらっと作品を全体的に見てもらう目的で制作し、紙ポートフォリオは気になった作品だけ作品の成り立ちや詳しい説明などをじっくり知ってもらう目的で制作しました。
紙とWeb両方をこのレベルで作られてる方はそこまで見たことがないので最初からインパクトがありました。Webの方ですが、Processing(電子アートとビジュアルデザインのためのプログラミング言語)を使っているところにグッときました(個人的に好きなだけです)。
紙の利点は、デジタル媒体よりも長文が読みやすいことだと思うので、各作品のページでは事細かに作品について説明しています。そのため、しっかり読み込めば作品が作られた経緯や目的、課題やその解決方法などがわかるようになっています。
ポートフォリオで長文はあまり好まれないものですが、あえて逆で攻めるのも面白いですね。私も大学院卒で論文を執筆していたこともあり、ある程度文章を書くのが得意だったので、ポートフォリオにあえて文章で説明を載せて「書ける」ことをアピールしようとしていました。
「大きさで自信を表現する」ポートフォリオ
最も大事なのは、面接官に印象を残すこと。何人もの面接をしている面接官にとっては、自分はその中の一人に過ぎないと考えた方が良いと思います。
小さなポートフォリオでは、印象に残りづらいどころか、自信がなさそうに感じます。だから、A3サイズ横の規格をおすすめします。私は大きさによってまず強い印象を与えられるようにしました。
「大きなポートフォリオで自信ある印象」にしようという発想が面白いです。鳥が威嚇で翼を広げて大きく見せるのを思い浮かべました。
読まなくても魅せられるポートフォリオを意識しました。文字の量は最低限にとどめ、自信のある選りすぐりの写真を大きく配置しています。
パっと見でページの内容が伝わるような、言葉選びが上手です。“面接官は何人も見てるので一瞬で印象に残るように〜”ですが、この思いやりというか気遣いは本当に素晴らしいです。実際何人も見させていただくと似たような印象は残りづらいというのはあります。前提、作品を紹介するものではありますが、こちらに関しては「いつ・どこで・誰に・何を伝えるポートフォリオ」なのか考え抜かれていると感じました。
「思考(試行)量を伝える」ポートフォリオ
最も大切なのは、とにかくスケッチを描きまくること。鉛筆で、ボールペンで、いろんな画材を使って描きましょう。これに尽きます。
スケッチの量がともかく膨大で、ここまで試行錯誤ができるんだと実物で示せるところが良いなと思いました。「がんばります!納得行くまで作りきります!」みたいなのを口頭で伝えるより遥かに説得力があります。
きっと入社後もこの熱量で真剣に磨き上げてくれるだろうとイメージが湧いてきますね。
2年制、3年制の専門学校でカーデザインを志している人はとにかく早くポートフォリオを作り始めてください!3年制の人は1年生の後半から始めるくらいでちょうどいいと思います。納得のいく出来にならなくても、それをたたき台にしてバージョンアップを日々コツコツ繰り返していけば4年制の学校のライバルと戦えます。
こちらのコメントは宮崎の訓練校で学ばれている方に特に伝えたいです。クリエイティブチームは職業訓練校の出身者が多いのですが、皆さんたったの6ヶ月で卒業です。早めに動き出すことで、4年制と戦うまでは難しくても、2年制ぐらいまでなら戦えそうな予感がしてきますね。
「実物が触れる」ポートフォリオ
インパクトを出したい作品はじゃばら綴じにしたりリーフレットの実物を忍ばせたり、「紙や製本にこだわれる」「実物を挿入できる」「デバイスに比べ大きなサイズ感を見せられる」という紙の良さがふんだんに表われていました。
ギミック満載で楽しそうなポートフォリオです。
基本、紙やファイリングだと「めくる」動作が中心ですが、ポケットから出して手に取ったり、じゃばら折りのページを広げたりなど、一つ一つの作品の特性にあわせて、どう見せたら効果的に伝わるかを考えられている印象です。
私も学生時代は「名刺とかはページで印刷するぐらいなら実物貼るといいよ」と先輩方からご指摘を頂いたことを思いだしました。今にこういうポートフォリオを見せられると「実物の大切さをわかってる」という印象を与えられそうだなと感じました。
「制作プロセスを丁寧に伝える」ポートフォリオ
製作工程やこだわり、見せ方が丁寧で伝わりやすいポートフォリオだなぁと思いました。
展示会場における自分の作品の配置図が掲載されていますが、制作物単品に留まらず、導線や見るタイミングまで先を意識して作っているところが伝わってきました。エディトリアルっぽい作品も天地左右の余白や対称などルール作りを意識して作ったことがパッとわかります。
制作プロセスは作品そのものとは関係ないですが、「実際の配置を意識する」「ルールを作る」など経験しないとわからない大切なポイントがしっかり押さえられている為、「これがこの制作には大切、あなたもそう思いますよね?」と問いかけられているような気分になりました。
ポートフォリオ制作はなかなか手がつけられないと思いますが、とりあえずでいいので早めにとりかかるのがオススメです!何度もブラッシュアップすることで納得のいくものができるので、参考にしたいデザインを見つけたら、まずは作って検証してみてください。
ポートフォリオに限らず実制作でも何度もブラッシュアップするのは大事だなぁと思います。
ただ作品を並べる以上を目指したい
色々な楽しい見せ方や伝え方があることを感じていただければ幸いです。
作品が主体でポートフォリオ自体はあまり凝ってないほうが良い、という考え方もありますが、そこに着眼するのではなく「自分のクリエイティブを効果的に伝えるためのツール」としてしっかり考えられているものが素敵だなと僕は思います。
とはいえどう伝えるのが正解なのかは自分しかわからないので、何度も作り直して模索してみるのが一番ですね。僕もポートフォリオはけっこうな回数作り直して、相当苦しかったですが良い経験になりました。